「SDGsとは何か、日本の取り組みは進んでいるのか?」
- SDGsの誕生
- SDGs 17目標ができるまで
- SDGs 17目標の内容
- 日本のSDGs の取り組みは進んでいるのか
- 国の取組み事例
- 自治体の取組み事例
企業の取り組み事例
1)MDGsの採択
2000年9月、ニューヨークで開催された国連ミレニアムサミットにおいて、「極度の貧困と飢餓の撲滅」、「普遍的初等教育の達成」、「ジェンダー平等推進と女性の地位向上」、「環境の持続可能性確保」、「開発のためのグローバルパートナーシップの推進」など8つの目標が提案され、2015年までに達成すべき「ミレニアム開発目標(MDGs:Millennium Development Goals)として、2001年に採択されました
MDGsが採択された背景には、産業革命以降、世界中で開発競争が繰り広げられてきた結果として貧富の格差や貧困や飢餓を招き、自然環境が破壊されたことで、経済・社会の基盤となる地球の「持続可能性が危機的状況にある」と考えられたことがあります。
(2)SDGsの誕生
2015年9月25日から27日にかけてニューヨーク国連本部において「国連持続可能な開発サミット」が開催され、150を超える加盟国首脳の参加の下、その成果文書として、「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための「2030アジェンダ(Agenda:検討課題、実施目標)」が採択されました。
「2030アジェンダ」は、人間、地球及び繁栄のために人類が取り組むべき行動計画として宣言及び2030年までに達成すべき目標を掲げました。その中核となるのが17の目標(Goals)と169のターゲットから成る「持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals:)です
先のMDGsが発展途上国向けの開発目標であって、先進国はその支援をする位置づけであったのに対し、SDGsは、先進国・途上国関係なく、地球上のすべての人が達成すべき目標として採択されたものです。
キーワード:「誰ひとり取り残さない」(no one will be left behind)
2.SDGs 17目標ができるまで
1962年:「沈黙の春」(レイチェル・カーソン著)刊行
1972年:国連人間環境会議がストックホルムで開催
:ローマクラブ(世界的有識者のネットワーク)が『成長の限界』を発表
1973年:ワシントン条約(絶滅の恐れのある野生動物の種の国際取引に関する条約)採択
1987年:環境と開発に関する世界委員会(ブルントラント委員会)が「持続可能な開発」(Sustainable Development)という考え方を提唱
1989年:国連環境計画(UNEP)が廃棄物に関する「バーゼル条約」を採択
1992年:地球サミット(リオデジャネイロ)で「生物多様性条約」及び「気候変動枠組条約」などが採択。以降、枠組条約締約国会議(COP:Conference of the Parties)を、「生物多様性」に関しては隔年毎に、気候変動に関しては毎年開催。
1995年:気候変動枠組条約第1回締約国会議(COP1)がベルリンで開催。
1997年:気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)で「京都議定書」採択。温室効果ガスの削減目標を設定
2000年:国連ミレニアム・サミットで「MDGs(Millennium Development Goals)を採択。
2012年:国連持続可能な開発会議(リオ+20)で議論が始まる
2015年:国連サミットで、MDGsの後継として、地球上のすべての人を対象とし2030年までに
達成すべき「持続可能な開発目標:SDGs(17目標と169ターゲット)を中核とする
「持続可能な開発のための2030アジェンダ(agenda)が全会一致で採択
2015年 :気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)で「パリ協定」採択
「この協定は、世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分
低く(well below 2℃)保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求すること(以下略)」
(資料):環境委員会 細谷和海さん(67回)(近畿大学名誉教授
3.SDGs17目標の内容
【社会分野に関する目標1~6
目標1.あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる
目標2.飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する
目標3.あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する
目標4.すべての人に包摂的かつ質の高い教育を確保し、生涯学習の機会を促進する
目標5.ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化を行う
目標6.すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理する
【経済分野に関する目標7~12】
目標7.すべての人々の安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する。
目標8.包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用
目標9.強靭(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの促進を図る
目標10.各国内及び各国間の不平等を是正する
目標11.包摂的で安全かつ強靭(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する
目標12.持続可能な生産消費形態を確保する
【環境分野に関する目標13~15】
目標13.気候変動及び影響を軽減するための緊急対策を講じる
目標14.持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する
目標15.陸域生態系の保護・回復、持続可能な利用の促進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復、及び生物多様性の損失を阻止する
【三つの分野に横断的に関わる目標16、17】
目標16. 持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する
目標17.持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを強化する。
資料:井上尚之著「サステナビリティ経営」2018年4月大阪公立大学出版協会(関西国際大学教授)
4.日本のSDGsの取組みは進んでいるのか?
(1)「Sustainable Development Report(持続可能な開発報告書)2022」(2022年6月)によれば、日本がSDGs 達成に大きな課題を残す現状が浮かび上がってきました。
この報告書は、国際的研究組織「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)が毎年発表するもので、各国のSDGs への取り組みを100点満点で評価、国別ランキングを公表しています。
163か国中のベスト3は、フィンランド、デンマーク、スウェーデンで、4位ノルウエー、5位オーストリア、6位ドイツ、7位フランス、8位スイスと続き、9位アイルランド
10位エストニアとなっています。
日本は2017年の第15位から、2022年は第19位に順位を下げました。
(2)日本の進捗が世界水準に比べ低調であると評価されている目標及び要因は、
目標 5「ジェンダー平等」:国会議員や企業の管理職以上に女性が少ないことや男女の賃金格差、
目標12「つくる責任つかう責任」:プラスチックごみの輸出量など
目標13「気候変動対策」:化石燃料燃焼に伴うCO2排出量など
目標14「海の豊かさ」:海水の汚染度など
目標15「陸の豊かさ」:生物多様性の保全が課題
目標17「パートナーシップで目標達成」の6項目。
(3)日本の取り組みで比較的順調に進んでいるのは、目標4(質の高い教育)と目標9(産業と技術革新)のみ。
資料:「Sustainable Development Report(持続可能な開発報告書)2022」
持続可能な開発報告書2022: SDGs進捗は2年連続で後退 | 国立研究開発法人 国際農林水産業研究センター | JIRCAS
5.国の取り組み事例
(1)2016年5月、首相を本部長とし、官房長官及び外務大臣を副本部長、他の全ての国務大臣を本部委員とする「持続可能な開発目標(SDGs)推進本部」を設置することが閣議で決定され、第1回会合(2016年9月12日)において、「SDGs実施指針」、「SDGsアクションプラン」などが決定されました。
去る2022年6月14日に開催された第12回会合で、岸田首相から、「SDGsは重要な羅針盤。経済、社会、環境の分野の課題を成長のエンジンへと転換して持続可能な成長を実現していく。新しい資本主義は、正にSDGsの達成につながる。(中略)政府として、新しい資本主義の下、誰一人取り残さない、持続可能な経済社会システムを作り上げていく。また、コロナ後の新たな経済・社会の在り方を模索する国際社会の取組を主導していく。(後略)」と決意を述べた、と伝えられています。
(2)「SDGs未来都市」の選定(環境省)
環境省は、地方創生事業の一環として、優れたSDGsの取組を提案する地方自治体を「SDGs未来都市」として選定し、先導的な取組を「自治体SDGsモデル事業」として支援し、成功事例の普及を促進しています。
SDGs未来都市は、2018年以降‘22年までに,累計156自治体が選定されています。
資料:持続可能な開発目標(SDGs)推進本部会合 議事次第 (kantei.go.jp)
6.自治体の取り組み事例
6.1 東京都の取り組み事例
1) 東京都が2021年3月に策定した「未来の東京戦略」では、推進プロジェクトを、SDGsの目線に立って強力に推進することで、持続可能な都市・東京を実現していくとしています。そして、多様な主体の自発的な行動や協働を後押しするとともに、こうした取組の輪を、東京から全国、そして世界に広げていくとしています。
(資料:東京都のSDGsの取り組み https://www.koho.metro.tokyo.lg.jp/2021/10/07.html)
2) 東京都の「SDGs未来都市」は、2019年以降日野市、豊島区、墨田区、江戸川区、足立区の5自治体が選定されています。
このうち、墨田区と江戸川区の事例をご紹介します。
- 墨田区の取り組み事例
「墨田SDGs未来都市計画」⇒keikaku.pdf (sumia.lg.jp)
「Action! すみだ SDGs」⇒ACTiON! すみだSDGs 墨田区公式ウェブサイト (sumida.lg.jp)
6.2 各自治体の取り組み事例
1)新潟県見附市
新潟県見附市のSDGs未来都市計画⇒SDGsbunsyo.pdf (city.mitsuke.niigata.jp)
2)和歌山市
和歌山市のSDGs未来都市計画⇒
和歌山市とSDGs未来都市|和歌山市 (city.wakayama.wakayama.jp)
3)鳥取県日南町
鳥取県日南町のSDGs未来都市計画⇒2238.pdf (nichinan.lg.jp)
7.企業の取り組み事例
東洋経済新報社の実施した「SDGs企業ベスト500社ランキング2022年版」によると
2年連続で第1位を獲得したのはオムロン(株)でした。
「ベスト500社ランキング」では、「人材活用」、「環境」「社会」「企業統治」の4カテゴリー、合計95個の評価項目に関して、同社が独自に評価し、ランク付けし、「SDGs企業ベスト500社ランキング2022年版」を公表したものです。
各カテゴリーに平均65点が配分され、配点の高い評価項目は、「人材活用」では有給休暇取得率、勤務形態の柔軟性、女性管理職・役員比率など、「環境」ではCO2削減中期計画、生物多様性対応支出額など、「社会」では社会貢献活動支出額、ボランティア休暇、社会的課題解決ビジネスへの対応など、「企業統治」では内部通報件数などとしています。
オムロン(株)は、体温計、血圧計等医療機器のトップメーカーですが、「環境」、「社会」、「企業統治」の各分野でトップの評価となりました。中期経営計画はSDGsの取り組みと連動、インドや中国で血圧測定習慣の普及活動の推進、子ども食堂の開設、国際交流助成、障がい者雇用率、就業時間中のボランティア参加、脱炭素に向けた「オムロン・カーボンゼロ」の進展などが評価されました。
なお、同500社ランキングでは、第2位に三菱UFJフィナンシャルグループ、第3位に大和証券グループ本社がランキングされています(詳細は省略)。
(資料:「週刊東洋経済」(2022年7月30日号)
(2022年8月 文責:中村晴永)