磯貝三男(56回)

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10年ぶりにた見直され東京都直下地震の被災内容の想定

江東5区の急ぐべき災害対策は!?

                       環境委員 磯貝三男(56回)

 東京都は、2011年の東北大震災の被害状況を踏まえて、2012年に直下地震の想定被害

の見直しを行いました。そして、今年5月25日には、30年以内の発生確率70%、死者

6,148名、震度6強以上の範囲が区部の約60%に広がる最も大きな被害をもたらすと想定

される「都心南部直下地震」をはじめとする次の4タイプ、8大規模地震を想定し、被害

    の想定内容を公開しました。

①都心南部直下地震 ②多摩東部直下地震 ③都心東部直下地震 ④都心西部直下地震 

 ⑤多摩西部直下地震 ⑥大正関東地震 ⑦南海トラフ巨大地震 ⑧立川断層地震

   それぞれの地震を想定した前提条件、地震のタイプ、被害の地域別・人的・物的予測など

の詳細については、東京都の防災ホームページや発刊された被害想定の「概要版」で入手

  できますので、是非ご一読されるようお薦め致します。

  今回は、いわゆる東京ゼロメートル地帯といわれる墨田、江東、葛飾、江戸川、足立区

 の江東5区に最も大きな被害をもたらす「都心南部直下地震」による、各区別の人的被災

  内容を表にしてご紹介し、その上で対応策を考えたいと思います。

 

  1. 見直しに伴う江東5区の人的被害想定 (1参照)

  避難者の数は、前回よりも増えている 

私は数年にわたり両国祭での展示や「淡交会報」でお伝えしてきましたが、この地域で

問題なのは、死者・負傷者・避難者のいずれをとってもその数が膨大であり、特に被災時

の避難者の数に至っては、表1をご参照戴ければすぐにお判りになりますが、それぞれが

9万人から30万人近くの住民が自宅から避難しなければならない想定になっています。

 東京都全体では、自治体や住民の努力の成果で、この10年間で、建物被害は37%強、

死者数は36%強、負傷者数は37%強減少となったとの想定です。しかしながら、避難者

数は21%強の減少にとどまっており、特に江東5区全体では、夜間人口の増加に伴ない、

逆に32%強増えています。

 更に、問題なのは、この地域では大地震は水害を連れてくる可能性が大きいということ

です。いわゆるカミソリ堤防で守られている地域があること、その崩壊・崩落する危険性

が危ぶまれ、充分以上に備える必要があります。又、停電に伴う揚水ポンプの停止や稼働

  能力の低下は、必然的に低地での水害を招くことにつながります。

  1. 江東5区の急ぐべき災害対策 水平開発から垂直開発へ

 地震対策としては、従来の政策、すなわち土地地盤の改良、建造物の耐震性の向上・

不燃化・難燃化、公共施設やインフラ、交通網の耐震性の強化などの延長線上の施策を

推進することに尽きると思います。又、被災後の避難先の確保については、以下の洪水時

 と同様の対応が必要だと思います。

洪水対策については、一言にして言えば、ゼロメートル地帯を洪水から守りきることは、

残念ながら事実上不可能だと考えます。言い換えれば、可能なのは、一人でも多くの住民

 を洪水被害から守り助けるように最大限の努力をすることだと思います。

 その為には、私は次のことを提案したいと思います。

① 緊急対策として、事前・直前の避難先として、公共施設、公園などに十分な高さのある

   避難施設を少しでも多く新たに建造、確保すること。

既に一部の区では実施に入っていますが、急速に拡大、拡充を図るべきだと思います。

この場合、先ずは老人、傷病者、女性、子供などの避難を優先して考え、一人でも多く

の人を助けるため、何人までとか全員を助ける!ではなく、何人か少しの人数でも助け

   るという考えに立ち、小規模の施設でも数を増やすべきだと思います。

江東5区には、各種学校は勿論、行政の建造物、美術館、図書館などが完備されて

おり、大小の公園が想像以上に沢山整備されていて、身近な緊急避難先として活用が

    可能です。

具体的に言えば、その施設は上水道・下水道(トイレ)を備え、出来れば雨露をしのげ

る構造にする。公共施設の外側部には、出来るだけ面積の大きいテラスを巡らせる。

一定の広さのある公園では、敷地内の周辺部に車いす用のスロープがついた回廊を建造

する。、大きな公園であれば回廊を二重・三重にし、非常時にはそれらをつなげて拡幅

出来るようにするなどなどがあると思います。区民からアイデアを募るべきだと思いま

   す。

更に、今後ますます増加するに違いない空き家の発生は、公園への転換や高層施設の新

   築など、点であれ線であれ、身近な避難先が確保出来る好機だと思います。

② 避難災害発生後、一定の時間が経った後の中長期的な先の確保策としては、予め決めて

おいた気心の判っている住民同志が出来ればある程度纏って、各区が結んでいる災害時

の相互援助協定先の自治体に、集団疎開を実施することが有効だと思います。その為

には、何の問題もない通常の時に、それぞれの区は、協定先と充分相互の意思の疎通を

図っておき、必要時には円滑に疎開先の施設や空間を確保出来るよう準備をしておくこ

   とが肝要だと思います。 

今回の両国祭に参加している当委員会の近藤委員が、その報告の中で言及しています

が、校友の児井正臣さんが「自然災害と大移住」という本を昨年発刊されました。その

中で、同氏はゼロメートル地帯の危険地域に住んでいる10万人とか100万人という

纏った数の住民を、組織的に、昨今激増している空き家に移住して貰い、ゼロメートル

   地帯を遊水地にしてしまうという構想を提案されています。

気宇壮大な発想で、大きな議論に発展する一石を投じられたものだと思いますが、是非

   ご参照下さい。

徳川家康の江戸入府当初は、江戸城周辺では高台を削り谷を埋めての土地の拡大が行

われましたが、それが一段落した後は、主として下町や周辺地での新田開発のように

水平方向の開拓により新たな土地が造られました。江東5区においても、運河の開削に

よって得られた土砂が埋立てに使われ、人々の生活から発生したゴミ類は、現在と同じ

   で、幕府が指定した近辺の海域に捨てられ、埋立てに使われました。

垂直方向の土地開発は、1980年代のスーパー堤防の建設により実現されるやに思え

ましたが、土地の収容が事実上進まなくなったことや財政上の限界などから一定の成果

   を挙げたものの、残念乍ら継続した事業にはなっていません。

今後は、地震対策であれ洪水対策であれ、江東5区では、高さのある頑強な人工地盤が

必要になります。区は勿論、国や都の強力な行政力、実行力を期待しましょう。

2022両国祭資料 都心南部直下地震 江東5区避難者数予測 (表1) 
  
  前提条件
  今回(2022年)     前回(2012年)
     地震発生時刻    : 冬の平日 夕方  :冬の平日午後8時
     震源地               : 区部の南部のプレート内  :東京湾北部
     マグニチュード    : M7.3    :M7.3
       震度                  : 6強  :6強
     風速                  : 8m/秒  :8m/秒
   上段:今回想定.。下段:前回想定。人。    
    区名  夜間人口  昼間人口     避難者       死者     負傷者
           
  墨田区 272,085 279,181 123,018 321 3,307
  247,606 262,514 144,939 665 7,121
           
  江東区 524,310 608,532 234,027 401 7,010
  460,819 490,708 233,762 449 10,164
           
  葛飾区 453,093 372,335 169,051 283 3,439
  442,586 343,039 200,970 500 5,515
           
  江戸川区 697,932 561,479 284,088 582 6,713
  678,967 534,942 316,536 600 7,706
           
 足立区 695,043 608,968 286,932 795 1,318
  683,426 539,309 280,862 712 9,033
           
  5区合計 2,412,501 2,278,045 1,045,803 2,510 29,890
  2,513,404 2,170,512 1,177,069 2,926 39,539
           
都全域合計 14,023,133 15,893,146 2,993,713 6,148 93,435
  13,131,573 14,948,404 3,385,489 9,641 147,611
                  以上
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